「最終的には生活保護がある」は正しいか?

菅義偉首相は、1月27日の参院予算委員会において、新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活が困窮する人たちへの支援を巡り、「最終的には生活保護という仕組みがある」と発言しました。

この発言が報道されると、世間からは多くの批判があがりましたね。今回は、この「生活保護」がどのような制度なのかについて簡潔に記載したいと思います。

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生活保護制度の趣旨は?

生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。

生活保護を受けるための要件は?

生活保護を受給する条件は「収入が最低生活費に満たないこと」があげられます。

生活保護は世帯単位で行います。まずは、世帯員全員が、その利用し得る資産/能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが大前提となります。

具体的にいうと、生活保護を受けるには下記条件が必要となるんです。
■不動産、自動車、預貯金や返戻金の発生する保険のうち、ただちに活用できる資産がないこと。
■ 病気や怪我などで働けない、もしくは、働いていても必要な生活費を得られていないこと。
■ 年金、手当等の社会保障給付の活用をしても必要な生活費を得られていないこと。

記事の一部、厚労省のHPを参考にさせていただきました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

考え方として、生活保護は最後のセーフティネットとして作られています。ですので、利用可能な資産や労働力、その他年金や手当、医療費助成などのあらゆる手段や制度は生活保護に先立って活用しなければなりません。活用してなお、国が算出する「最低生活費」を下回る場合に、その差分を生活保護費として支給されることになります。

また、親族から経済的支援を受けられる人も生活保護の対象外となります。これもとても大事なポイントです。

生活保護費の種類とは?

この保護費には、8種類の扶助があります。
・食費や光熱費など生活に必要な費用
・義務教育期間の教育にかかる費用
・アパート等住宅にかかる費用
・医療サービス費用
・介護サービス費用
・出産に関わる費用
・働くための技能修得などに必要な費用
・葬祭や埋葬にかかる費用
最低生活費の額は、この8種類の扶助の合計となります。
また、これら以外にも災害にあった際の修繕費なども受給対象となります。

今は、コロナ禍で仕事を奪われ、生活が困窮してしまうケースもあると思います。また、突然の怪我や病気で働けなくなってしまう可能性だってあります。このような場合でも、全ての人々が安心して生活できるように支援する制度が生活保護です。

受給者はどれくらいいるのか?

生活保護を実際に受給している人は、令和3年1月時点で2,049,630人です。
人口比1.63%ということで、100人に1.6人になります。

菅義偉首相の発言をどう捉えるか。

私は、この発言自体は、「社会保障の仕組みの説明として間違っていない」と思っています。間違いなく生活保護は、社会のセーフティーネットの役割を果たす存在です。憲法第25条(全ての国民は、健康で文化的な最低限どの生活を営む権利を有する。)に基づいて、経済的に苦しい生活をしている人たちに対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための国の支援制度です。

では、なぜ炎上したのか。

それは、生活保護制度がまだまだ世間に受け入れられていない点を鑑みず、菅義偉首相の発言に重みが感じられなかったからでしょう。

例えば、この生活保護の条件である「最低生活費」ですが、実際はそれを下回る生活をしていても生活保護を申請出来ていない世帯がたくさんあります。
※生活保護基準以下の低所得世帯の内、実際に制度を利用できているのは、2割程度とも言われているんです。

なぜなら、生活苦であることを親族にばれたくないという気持ちがあるからです。この「扶養照会」が申請の最大のハードルとなっています。さらには、生活保護を受給するのは、「恥ずかしい」という気持ちから、世間に対して後ろめたさがあったりします。もしくは、ニュースなどで取り上げられる不正受給問題で、この制度自体に良くない印象を抱いている方々も多いことでしょう。

受給する側もされる側も、まだまだ浸透されていない状態です。本当に必要な人々が十分に利用できている制度ではない点が大きな問題です。それなのに、軽々しく発言されたこの説明が、人々の怒りを買ったと思うのです。

まずは、人間の心に寄り添えた制度設計が必要なのかもしれません。生活保護は決して恥ずかしくないということを浸透させること。

それが出来て初めて、社会のセーフティーネットが機能していると言えると思います。

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